高齢になるにつれて、住み慣れた家の中でも思わぬ場所に危険が潜んでいると感じることが増えてきます。ちょっとした段差でつまずいたり、冬場の寒暖差で体調を崩してしまったりと、以前は気にならなかったことが、日々の生活に不安を与える原因となることも少なくありません。
こうした悩みを解消し、これから先も安心して暮らせる住まいを実現する手段のひとつが「安全リフォーム」です。年齢を重ねたからこそ必要になる配慮を取り入れた住まいは、生活をより快適に、そして豊かなものに変えてくれます。
この記事では、高齢者にとっての安全なリフォームの具体的な内容や、快適に過ごすためのポイントについて詳しく解説していきます。
高齢者にとっての安全リフォームとは?
高齢者が自宅で快適かつ安全に過ごすには、住まいの構造や設備を見直すことが欠かせません。加齢に伴い、筋力やバランス感覚が低下すると、以前は気にならなかった小さな段差や設備が、大きな事故の原因となる可能性があります。そうしたリスクに備えた住環境を整えるために行われるのが、安全リフォームです。転倒やヒートショックといった日常生活の中に潜む危険を減らし、安心して暮らし続けられる空間をつくることが目的です。
年齢と共に増す家庭内のリスク
年を重ねるごとに身体能力は少しずつ変化していきます。筋力や視力の低下、反応の遅れなどが重なり、家庭内での思わぬ事故が起こりやすくなります。特に多いのが「転倒」です。ちょっとした段差につまずいたり、滑りやすい床で足を取られたりして転ぶことで、骨折や頭を打つなどの重大なけがにつながることがあります。
また、冬場には浴室や脱衣所の温度差によって発生する「ヒートショック」も深刻です。急激な温度変化は血圧の変動を引き起こし、高齢者にとっては脳出血や心筋梗塞といった命に関わる事態にもつながりかねません。こうしたリスクは、住まいの工夫や設備の見直しによって大きく軽減できます。
リフォームで防げる転倒や事故
家庭内の事故は予防が可能です。たとえば、室内の段差を取り除き、床をフラットにすることで、つまずきやすい箇所を減らせます。さらに、滑りにくい素材の床材を使うことで、濡れた足でも安心して歩くことができ、転倒の危険を軽減します。手すりの設置も非常に効果的で、立ち座りの多い場所や階段の昇降時などに、身体の支えとして活躍します。
照明も重要なポイントです。視力が低下してくる高齢者にとっては、少しの暗がりでも物が見えづらくなります。明るさを確保することで視認性が上がり、事故の予防につながります。日常生活の中で起こりうるさまざまなリスクを、リフォームであらかじめ排除しておくことが、安心した暮らしへの第一歩です。
住まいの見直しがもたらす安心感
安全リフォームによって得られるのは、物理的な安全性だけではありません。身体的な負担が軽減されることで、住まいに対する安心感も高まり、毎日の生活に余裕が生まれます。たとえば、トイレや浴室の使い勝手が良くなることで、自分の力で日常動作をこなせる喜びが増し、自立した生活を続けやすくなります。
また、離れて暮らす家族にとっても、「両親が安全な家に住んでいる」という事実は、大きな安心材料となります。介護が必要になったときにも、すでにバリアフリー化された住宅であれば介助がしやすく、介護者の負担を減らすことにもつながります。将来を見据えた住まいの見直しは、今だけでなく、この先の暮らしをも支える重要な備えです。
家の中の危険箇所をチェックしよう
高齢者が安全に暮らすためには、まず現在の住まいのどこに危険が潜んでいるのかを把握することが大切です。普段は何気なく過ごしている空間でも、年齢を重ねた身体には負担となる場所や動きが存在します。住まいの中にあるリスクを洗い出すことで、どこをどう改善すれば安心して生活できるかが見えてきます。
段差や滑りやすい床
家の中で最も多い事故原因のひとつが、床の段差による転倒です。玄関の上がり框や部屋の敷居など、わずかな段差でも高齢者にとっては大きな障害になります。足を高く上げにくくなったり、歩幅が小さくなることで、引っかかりやすくなるためです。
また、フローリングやタイルなどの床材も要注意です。表面がツルツルしていると、靴下やスリッパで滑りやすくなり、転倒のリスクが高まります。水回りや玄関など、床が濡れやすい場所では、より滑りにくい素材に替えることが推奨されます。
滑り止めマットを敷くなどの対策も有効ですが、根本的に床材や段差を改善することで、より安心して歩ける住まいになります。
照明の暗さが生む事故リスク
視力の衰えは自然な老化現象ですが、それに対応していない照明環境は思わぬ事故を招く原因になります。暗い廊下や階段、トイレへの通路などでは、足元がよく見えず、段差を踏み外す危険があります。
また、明るさだけでなく、光の色味にも配慮が必要です。白くはっきりした光のほうが、細かい物の輪郭が見えやすく、視認性が高まります。高齢者の目は黄色味がかった光に対して鈍感になりがちなため、昼白色の照明を選ぶと効果的です。
加えて、照明のスイッチが遠い場所にあると、暗がりの中を移動することになり非常に危険です。人感センサー付きの照明を取り入れることで、自動で点灯し、夜間の移動も安心して行えるようになります。
ヒートショックの危険性
冬の寒い時期に、暖かいリビングから寒い浴室やトイレへ移動する際の温度差が原因で起こるヒートショックは、高齢者にとって極めて危険な現象です。寒さによって血管が急激に収縮し、その後急に温まることで血圧が大きく変動し、心臓や脳に過剰な負担がかかります。
特に浴室や脱衣所は家の中でも温度差が大きくなりやすい場所です。断熱材の不十分な古い住宅では、冬場の室内温度が10度以下になることもあり、入浴時に大きなリスクを伴います。
ヒートショックを防ぐためには、浴室暖房機や脱衣所の暖房器具を導入することが効果的です。また、浴槽の保温性を高めたり、入浴前に部屋全体をあたためておくなど、細かな対策を積み重ねることが重要です。
こうした温度差のリスクは、見た目では分かりづらいため、意識的にチェックして改善することが求められます。
家具や配線の位置も見直しを
転倒や事故の原因は段差や滑りだけにとどまりません。家具の配置が不自然だったり、動線上にコードやカーペットの端が出ていたりすると、それが引っかかりの原因となります。特に夜間や慌てて移動するときには危険です。
家具はなるべく壁際に寄せ、通路には十分なスペースを確保しましょう。また、電源コードや延長コードはカバーで固定する、または足元を避けた配線に変えるなどの工夫が必要です。
さらに、収納の位置も見直したいポイントです。高い場所にある収納は転倒のリスクがあるため、日常的に使うものは腰から胸の高さに収めると安心です。
安全性を高める具体的なリフォーム内容
高齢者が安心して暮らせる住まいを実現するためには、家の中にある潜在的な危険を取り除くだけでなく、日々の生活を支えるための具体的な工夫を取り入れることが重要です。
バリアフリー化の基本ポイント
高齢者向けリフォームの基本としてよく知られているのが「バリアフリー化」です。バリアフリーとは、段差を取り除いたり、通路を広げたりすることで、誰にとっても移動がしやすくなる住まいづくりのことを指します。
代表的な工事としては、床の段差をなくして全体をフラットにすることや、敷居の撤去が挙げられます。さらに、ドアを開き戸から引き戸に変更することで、開閉が楽になり、車いす利用者でも使いやすい空間に変えることができます。
また、玄関にはスロープを設置することで、歩行が不安定な方でも安全に出入りできるようになります。階段には手すりをつけたり、段差の高さを見直したりといった細かな工夫が、安心な生活環境につながります。
滑りにくい床材の選び方
床材の選定は、安全な住まいづくりに欠かせない要素です。高齢者は加齢により足腰が弱くなるため、滑りやすい床材では思わぬ転倒を招いてしまいます。
おすすめは、クッション性があり、なおかつ滑りにくい素材を使った床材です。たとえば、ビニール系のノンスリップフロアや、特殊加工を施した木材などがあります。これらは見た目にも温かみがあり、かつ転倒時の衝撃を吸収してくれるというメリットがあります。
また、靴下やスリッパを履いたままでも滑りにくい仕様になっているものを選ぶことで、日常の動作がより安全になります。水まわりには防水性の高い素材を使うなど、場所ごとに適した床材を使い分けることも大切です。
手すり設置で転倒予防
手すりの設置は、リフォームの中でも非常に効果が高く、比較的取り入れやすい対策です。玄関や廊下、階段、トイレ、浴室など、立ち座りや移動が必要な場所に手すりを設けることで、身体のバランスを保ちやすくなり、転倒のリスクを大きく減らせます。
手すりの高さは、利用する方の身長に合わせて調整することが重要です。一般的には、床から75〜85cm程度が使いやすいとされていますが、実際にはその人の歩き方や姿勢に合わせた位置に設置するのが理想です。
さらに、壁に直接取り付けるだけでなく、強度のある下地が必要になるため、専門業者に依頼して確実に施工してもらうことが推奨されます。手すりの材質にもこだわり、握りやすく冷たさを感じにくいものを選ぶと、使い心地がより快適になります。
水回りの改善で転倒リスクを軽減
浴室やトイレなどの水回りは、滑りやすく事故が起きやすい場所のひとつです。そのため、安全性を高めるための工事はとても重要です。
たとえば浴室では、段差のないバリアフリー設計に加えて、浅めの浴槽を選ぶことで出入りの負担を減らせます。また、床材には水に濡れても滑りにくい加工が施された素材を使用し、浴室内の温度差を軽減するための断熱改修や暖房機の設置も行うと安心です。
トイレでは、立ち座りを補助するためのL型手すりの設置や、車いす対応の広めの空間確保がポイントになります。床の素材にも配慮し、掃除がしやすく滑りにくい材質にすることで、常に清潔で安全な環境が保たれます。
視認性と使いやすさを考えたスイッチ・コンセント配置
高齢者にとって、見えやすさや操作のしやすさも暮らしの快適性と安全性を大きく左右します。電気のスイッチやコンセントは、目線の高さに近く、手を伸ばしやすい位置に配置し直すことで、かがんだり手探りで探す手間がなくなります。
スイッチには大きめのプレートや、発光式で夜間も見やすいタイプを選ぶとさらに安心です。ベッド周辺やトイレ、廊下などにナイトライトを設置するのも効果的で、暗がりでの移動時に足元を明るく照らしてくれます。
お風呂とトイレのリフォームで生活が快適に
水回りの使い勝手は、高齢者の生活の質に直結します。特にお風呂とトイレは毎日使う場所である一方、事故が起きやすい空間でもあります。滑りやすさ、温度差、姿勢の負担といった問題を解消することで、安全性が高まり、入浴や排泄といった基本的な生活動作がより快適に行えるようになります。
浴槽の浅型化と出入りのしやすさ
昔ながらの浴槽は深さがあるため、またぎ動作が困難な高齢者にとっては大きな負担となります。足を高く上げなければならないうえ、濡れた床で滑りやすくなるため、転倒のリスクも高まります。
そこで推奨されるのが、浅型浴槽への交換です。高さが低くなることで、無理のない動作で出入りができ、足腰に負担をかけません。また、浴槽内にステップを設けることで、より安定した姿勢で入浴することが可能です。
あわせて、浴槽の縁や壁にしっかりとした手すりを取り付けることで、立ち上がりや座り込みの動作がぐっと楽になります。お湯を保温する機能がついた浴槽を選ぶことで、冬場でも温度が下がりにくく、快適な入浴時間が確保できます。
浴室暖房や乾燥機の設置
冬場に特に問題となるのが、浴室と脱衣所との温度差によるヒートショックです。急激な温度変化は血圧を変動させ、心臓や脳に大きな負担をかけるため、高齢者にとっては非常に危険です。
その対策として効果的なのが、浴室暖房の導入です。入浴前に浴室を暖めることで、外気温とのギャップを小さくし、身体への負担を軽減します。また、脱衣所にも小型の暖房器具を設置することで、着替えの際の冷え込みを防げます。
さらに、浴室乾燥機は洗濯物を乾かすだけでなく、湿気やカビの発生を抑える効果もあり、衛生面でも安心です。梅雨時や冬の洗濯物の乾燥場所としても重宝されます。安全性と快適性の両方を考えた設備選びが、高齢者の暮らしを支えてくれます。
トイレのバリアフリー化の工夫
トイレは使用頻度が高く、しかも狭い空間の中で身体を動かす必要があるため、高齢者にとっては特に配慮が求められる場所です。まず検討すべきは、スペースの確保です。将来的に介護が必要になった場合を見据え、車いすが入れるだけの広さを確保しておくと安心です。
また、立ち座りを補助する手すりの設置は、トイレリフォームの基本です。便座の横にL型手すりを取り付けることで、姿勢を安定させながら安心して動作ができます。便座の高さも重要なポイントで、標準よりもやや高めのものを選ぶことで、立ち上がりが楽になります。
加えて、和式から洋式への変更も推奨されます。足腰への負担が大きい和式トイレは、高齢者にとっては不向きです。洋式トイレであれば、座ったまま排泄ができ、介助の際にも扱いやすくなります。
ドアや床材など細部にも配慮を
お風呂やトイレの安全性は、設備だけでなく、その出入り口や周囲の環境によっても左右されます。たとえば、出入口の段差があるとつまずきの原因となるため、バリアフリー設計で段差をなくすことが望ましいです。
ドアも開き戸から引き戸に変更すると、開閉時に体を大きく動かす必要がなくなり、安全性が高まります。引き戸は介助する際にも邪魔になりにくく、スペースの有効活用にもつながります。
床材にも注目したいポイントがあります。特に脱衣所や洗面所は水に濡れる機会が多いため、滑りにくく、かつ掃除がしやすい素材を選ぶことが大切です。弾力のある素材を選ぶことで、万が一転倒した際の衝撃もやわらげてくれます。
照明や換気設備の見直し
高齢になると視力が落ち、暗い場所では足元が見えにくくなります。そのため、浴室やトイレの照明も見直しが必要です。やわらかい光ながらも明るさが十分にある照明を取り付けることで、転倒のリスクを減らせます。
さらに、湿気がこもりやすい浴室では換気も重要です。十分な換気機能がないとカビが発生しやすく、健康面にも悪影響を及ぼす恐れがあります。定期的に空気を入れ替えることで、常に清潔で快適な空間を保つことが可能です。
キッチンも安全で使いやすく
毎日の食事をつくるキッチンは、家の中でも多くの時間を過ごす場所のひとつです。高齢者にとって、火を使う作業や高い場所への手の届きにくさなど、身体的な負担が大きくなりやすい場所でもあります。そのため、安全性と使いやすさを両立したキッチンリフォームは、安心して自立した生活を続けるうえでとても重要です。
IH調理器のメリット
高齢者のキッチンリフォームで真っ先に検討したいのが、ガスコンロからIH調理器への変更です。火を使わないIH調理器は、やけどや火災のリスクを大幅に減らせます。炎が出ないため衣類に引火する心配がなく、調理中に手元が触れても火傷の危険が少なくなります。
また、タイマー機能や自動電源オフ機能が搭載されているタイプを選べば、加熱しっぱなしで焦がしてしまう心配もありません。操作もボタン一つで簡単に行えるものが多く、慣れてしまえば使い勝手も非常に良いです。
さらに、IH調理器は天板が平らで掃除がしやすく、こぼれた油や汁もサッと拭き取れるため、清潔なキッチン環境を保ちやすくなります。これらの点が、高齢者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
システムキッチンへの変更
昔ながらの流し台では、調理スペースが狭かったり、収納が奥まっていて取り出しにくかったりと、高齢者にとっては不便な点が多くあります。そのため、機能的で整理されたシステムキッチンへの変更は、安全性と作業効率を同時に高めてくれます。
システムキッチンでは、収納が引き出し式になっているため、奥まで見渡しやすく、腰をかがめる必要も少なくなります。自分の身長や使い方に合わせてキッチンの高さを選べるため、立ち仕事による腰への負担も軽減できます。
また、調理台やシンクとコンロの配置が最適化されているため、無駄な移動が減り、作業中の事故も起こりにくくなります。手元に必要なものが取りやすい位置にまとまっていることで、調理の際のストレスも軽減されます。
高齢者に優しい収納の工夫
収納の使いやすさは、安全性に直結する重要なポイントです。特に注意したいのが、無理な姿勢で手を伸ばすことが必要になる高い棚や、腰を大きく曲げなければならない床下収納などです。こうした収納は使いにくいだけでなく、転倒やぎっくり腰の原因にもなりかねません。
そのため、収納の配置を見直し、手が届きやすい範囲に必要なものを収める工夫が必要です。引き出し式の収納を活用すれば、かがまずに奥のものまで取り出せますし、扉タイプの収納よりも開閉動作が少なくて済みます。
また、食器や調味料など、頻繁に使うものは特に取り出しやすい場所にまとめると、動作がシンプルになり、安全性も高まります。ラベルを貼る、色分けするなどの工夫も、視認性を高める助けになります。
作業動線を意識したキッチンレイアウト
キッチン内での動きが多いと、それだけ転倒や事故のリスクも増えます。そこで大切なのが、作業動線を意識したレイアウトです。冷蔵庫、調理台、シンク、コンロが自然な流れで使えるように配置されていることで、無駄な移動がなくなり、調理作業がスムーズに行えます。
また、キッチンが狭い場合でも、コンパクトながらも効率的に動ける配置にすることで、使い勝手は大きく変わります。通路幅をしっかり確保し、車椅子や歩行器が通れるスペースがあると、介助が必要になった際にも対応しやすくなります。
歩く距離や立ち止まる回数を減らす工夫が、作業中の疲労軽減にもつながり、結果として安全な調理環境を生み出します。
自然素材を取り入れた温かみのある空間に
キッチンの空間づくりにおいて、安全性や機能性と同じくらい大切にしたいのが、心地よさです。特に高齢者にとっては、見た目や肌触りが落ち着く自然素材を使うことで、居心地の良い空間になります。
たとえば、木材を使った面材や天板は、視覚的にも温かみがあり、柔らかな印象を与えます。天然素材には、湿度調整や防臭といった効果も期待できるため、キッチンの空気環境も快適になります。
クロス仕上げの壁よりも、自然素材を使った内装にすることで、安っぽさを感じにくく、高級感のある落ち着いた雰囲気を演出できます。安全性と快適性の両立を目指すキッチンには、こうした素材の選び方も重要なポイントです。
自然素材を使った快適な住まいづくり
安全で使いやすい住まいを実現するだけでなく、心地よさや落ち着きを感じられる空間にすることも、高齢者にとっては非常に大切なポイントです。特に加齢に伴い、家の中で過ごす時間が長くなるにつれて、「過ごしやすさ」や「快適さ」へのこだわりは高まります。そこで注目されているのが、自然素材を使った住まいづくりです。
木のぬくもりと健康効果
木材は古くから日本の住まいに使われてきた素材であり、その温かみのある質感や香りは、住む人に安心感を与えてくれます。無垢材の床は、夏はさらりと涼しく、冬はほんのりと暖かく、裸足でも快適に過ごせるのが特徴です。さらに、木には調湿作用があり、湿気の多い季節でも室内の空気を快適に保つ効果があります。
また、木の香りにはリラックス効果があるとされており、ストレス軽減や安眠効果を期待することもできます。人工的な素材にはない自然な風合いと、優しい肌触りが、高齢者の感覚にもなじみやすく、長時間過ごしても疲れを感じにくいのが魅力です。
視覚的にも温かみのある木材は、空間を柔らかい印象に変えてくれます。無機質なクロス仕上げや合成板とは違い、木目や節目の美しさが空間に個性を与え、居心地の良い住まいづくりに一役買ってくれます。
クロスから自然素材への変更理由
多くの住宅では壁や天井にビニールクロスが使われていますが、クロスは人工的な素材であるため、時間の経過とともに劣化が目立ちやすく、剥がれや変色の原因にもなります。見た目にも安っぽさを感じやすく、空間の印象がチープになることもあります。
これに対して、自然素材を用いた内装材は、年月を重ねるごとに味わいが増し、経年変化も楽しめます。たとえば、珪藻土や漆喰などの塗り壁材は、調湿・消臭・抗菌といった機能があるうえ、シンプルで洗練された見た目も魅力です。室内の空気を清浄に保ち、カビやダニの発生も抑制してくれるため、アレルギー体質の方にも適しています。
また、自然素材は静電気が発生しにくいため、ホコリが付きにくいという点でも掃除がしやすく、高齢者の負担を軽減してくれます。
断熱性の高い素材選び
住まいの快適性を左右する大きな要素のひとつが「断熱性」です。昔の住宅では断熱材が十分に入っていないケースも多く、夏は暑く冬は寒いという問題を抱えていることがあります。とくに冬場は、室温の低下がヒートショックの原因になりやすいため、断熱性の改善は非常に重要です。
自然素材の中には、断熱性能に優れたものも数多くあります。たとえば、セルロースファイバーやウール系の断熱材は、自然素材由来でありながら高い断熱効果を発揮します。加えて、壁や床に無垢材を使用することで、冷たさを感じにくく、温度差を和らげることができます。
断熱性の高い素材を適所に用いることで、エアコンや暖房器具の効率も良くなり、光熱費の削減にもつながります。室内の温度が安定することで、身体への負担が減り、快適で健康的な生活が実現できます。
五感にやさしい住まいづくり
高齢になると、視覚・聴覚・触覚などの感覚が徐々に鈍くなってきます。そのため、見た目の心地よさだけでなく、触ったときのやさしさ、音の反響の少なさ、空気の質といった“五感”にやさしい住環境が求められます。
自然素材には、そうした五感に配慮した特性が備わっています。たとえば、木材の床や壁は足音や生活音を和らげてくれるため、静かな空間を実現し、音に敏感な高齢者にとっても心地よく過ごせます。
また、室内の空気をクリーンに保つ自然素材は、化学物質の放出が少なく、長時間過ごしても不快感を覚えにくいというメリットもあります。高齢者が安心して深呼吸できる空間こそが、真に快適な住まいといえるでしょう。
見た目と機能を兼ね備えた素材選び
自然素材を使うことで得られる魅力は、見た目のやさしさや健康効果にとどまりません。機能性とデザイン性を兼ね備えた素材を選ぶことで、住まい全体の価値も高まります。たとえば、床材ひとつとっても、無垢材のフローリングは見た目の美しさに加え、耐久性や断熱性にも優れています。
また、壁や天井に珪藻土や漆喰を使うことで、シックハウス症候群のリスクも抑えられ、より安心できる室内環境を実現できます。こうした素材は、化学接着剤などを多用しないため、室内にこもる不快なにおいも抑えられ、快適な空気の中で過ごすことができます。
高齢者が長く住み続ける家だからこそ、身体と心にやさしい素材選びが大切です。自然素材を取り入れたリフォームは、見た目の上質さだけでなく、機能性や健康への配慮にも優れているため、理想の住まいづくりを目指す方に最適な選択肢となります。
監物建築工業の高齢者向け安全リフォームの特徴
高齢者が安心して暮らせる住まいを整えるには、単なる段差解消や手すりの取り付けといった表面的な工事だけでは不十分です。住む人の体の状態や生活習慣、さらには住宅の構造や環境に合わせて、一つひとつ丁寧に計画を立てる必要があります。監物建築工業では、そのような一人ひとり異なる状況に合わせたリフォームを行い、使いやすさと安全性を両立させた住まいを提案しています。
現地確認と丁寧な見積もり対応
最初に行うのは、利用者が普段どのように暮らしているかをしっかり把握する「現地調査」です。建物の間取りや設備だけでなく、日当たりや通風、断熱性能といった住環境全体を確認します。これにより、どのようなリフォームが必要かを的確に判断することができます。
確認した内容を踏まえて、工事内容とその費用についてわかりやすい見積もりを提示します。限られた予算内でも満足度の高い改修が行えるよう、優先順位を整理しながら、無理のないプランを一緒に考えることが可能です。さらに、図面を用いて視覚的に工事のイメージを説明するため、完成形が想像しやすく、納得のうえで工事を進められます。
自然素材やユニットバスの導入事例
こだわっているのは、単なる設備更新にとどまらない「快適な空間づくり」です。たとえば、クロスの代わりに木材や珪藻土などの自然素材を使うことで、空気の質や室内の雰囲気がやわらかくなり、高齢者にも心地よい空間が広がります。これらの素材は調湿や消臭の効果もあり、化学物質の少ない安心な環境づくりに役立ちます。
また、浴室には断熱性の高いユニットバスを導入することが多く、冬場でも室温差を感じにくい快適な入浴が可能になります。浅くてまたぎやすい浴槽や、滑りにくい床、手すりの配置など、安全面にも配慮した設計が施されています。特にヒートショックのリスクを減らす点で、高齢者にとって大きなメリットとなっています。
オール電化やヒートショック対策の実績
火を使う機器の操作が不安になってくる高齢者にとって、安全性を高めるための設備選びは非常に重要です。その一つがオール電化の導入で、火を使わないIH調理器により火災のリスクを抑えられるほか、スイッチ操作も簡単で扱いやすくなります。
エコキュートを活用した給湯システムは、温度管理がしやすく光熱費の節約にもつながり、特に冬場のヒートショック予防に効果を発揮します。加えて、床下や壁、天井への断熱材の施工や、室内の空気を循環させるシーリングファンの設置など、目に見えない部分にもこだわって改修を行います。
将来を見据えたリフォーム提案
目先の快適さだけでなく、将来の変化に備えた設計が大切です。今は元気でも、今後介助が必要になる可能性を見据えて、通路の幅を広げる、車いすでもスムーズに移動できるような間取りにするといった配慮が取り入れられています。
キッチンや洗面台も、立って使うことが難しくなった場合に備えて、座ったままでも使用しやすい高さやスペースに調整します。家族の誰もが安心して使えることを意識したリフォームは、長く住み続けるための確かな土台となります。
施工後のメンテナンスや追加改修にも柔軟に対応しており、地域に根ざした関係性を大切にしている点も、選ばれている理由のひとつです。信頼関係に基づいたきめ細かな対応が、多くの高齢者とそのご家族にとって大きな安心となっています。
まとめ
高齢になると、住まいのちょっとした段差や温度差が、大きな事故の原因になることがあります。そうしたリスクを減らすためには、安全面に配慮したリフォームがとても重要です。
本記事では、転倒防止のためのバリアフリー化、滑りにくい床材の導入、手すりの設置など、暮らしを守る工夫をご紹介しました。お風呂やトイレ、キッチンなどの水回りも、安全性と使いやすさを両立することで、毎日の生活がぐっと快適になります。
また、木材や自然素材を取り入れることで、空間にやさしさとぬくもりが生まれ、心地よい住まいに変わります。
監物建築工業では、高齢者の暮らしを見据えたリフォームに力を入れており、自然素材や水回りの改修、ヒートショック対策などにも対応しています。将来の安心を考えた住まいづくりを、私たちと一緒に始めてみませんか?